
在日朝鮮人一世の歴史を記録する「私の旅」を始める
写真©朴壽南
【朴壽南(パク・スナム) プロフィール】
1935年3月、三重県生まれ。在日朝鮮人2世。小松川事件(1958年)の在日朝鮮人2世の少年死刑囚、李珍宇(イ・ジヌ)との往復書簡『罪と死と愛と』で注目を集める。1964年より植民地による強制連行、広島と長崎で被爆した在日朝鮮人一世の声を掘り起こし、証言集『朝鮮・ヒロシマ・半日本人』(1973年)を刊行。1979年には『李珍字全書簡集』を刊行した。
1986年にペンをカメラにかえのドキュメンタリー映画『もうひとつのヒロシマ』を制作、初監督。1991年、沖縄戦の朝鮮人「軍夫」「慰安婦」の実相を追った『アリランのうた−オキナワからの証言』を発表。2012年、沖縄戦の「集団自決」と朝鮮人「慰安婦」「軍属」の証言を集め『ぬちがふぅ(命果報)−玉砕場からの証言』完成。2017年に韓国の「慰安婦」被害者たちの闘いの記録『沈黙−立ち上がる慰安婦』を制作。韓国では第18回ソウル国際女性映画祭で上映され、以後第8回DMZ国際ドキュメンタリー映画祭で「勇敢な雁賞」を受賞し新作『よみがえる声』は、娘朴麻衣と初の共同監督で完成させた。
『よみがえる声』完成に寄せて
1945 年10 歳の夏、天皇を神としてきた私は日本の敗戦と祖国の解放を同時に迎えました。
私のあるべき場所はどこかー。
それを探して、戦後なお隠蔽されてきた歴史の闇に降りていきました。
広島へ、そして沖縄の戦場へー。
存在を奪われてきたコリアン原爆被爆者、戦場へ連行された「慰安婦」、そして日本軍によって自
決を強いられた沖縄人。
その「沈黙」を映像に記録し、奪われた存在を回復させる旅は、私自身のアイデンティティをとり戻す旅でありました。
犠牲になった人たちのハン(恨)を歴史の光の中によみがえらせ、
再び悲劇を繰り返さないために、私の旅は終わることはありません。
2023年10月 朴壽南 (パク・スナム)